ようちえん絵本大賞
第13回ようちえん絵本大賞
-新しい絵本を見つけよう-
第13回ようちえん絵本大賞は、“子どもに読み聞かせたい絵本”、“お父さん・お母さんに読んでほしい・お薦めしたい絵本”、“まだ多くには知られていない素晴らしい絵本”を選考の基準として、(一財)全日本私立幼稚園幼児教育研究機構・調査広報委員会が過去おおむね8年以内に出版された絵本の中から選出いたしました。本年度もコロナ禍の影響により、対面式で「ようちえん絵本大賞」の選考会を開催することができなかったため、調査広報委員会委員がそれぞれ薦める絵本、計13冊を大賞として発表いたします。
調査広報委員一同、これからも子どもたちと絵本との出会いの一助となるよう努めてまいります。なお、参考までに調査広報委員会が絵本の紹介文を記載させていただきます。
第13回ようちえん絵本大賞 受賞一覧
絵本名・作者・出版社名 | 絵本の紹介 |
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おんなじ だあれ? しもかわらゆみ(作) あかね書房 |
絵本ページの小さい穴から見える動物の体一部から当てっこする遊び絵本。簡単に答えられそうで中々難しく、子どもの想像性から考えを引き出すきっかけになる。描かれる動物絵がとても繊細で可愛い作品です。 |
どうしてパパとけっこんしたの? どうぶつたちそれぞれのこたえ 桃戸栗子(作) 福音館書店 |
タイトルの通り、親子の間で、子どもが質問をして親が答えるということがあるのではないでしょうか。その風景を、様々な動物の親子の言葉で豊かに表現されているこの絵本は読んでいて心が温まります。 |
雪の花 セルゲイ・コズロフ(原作) オリガ・ファジェーエヴァ(絵) 田中友子(文) 偕成社 |
大晦日に蝋燭を持って来るはずのクマ君が熱を出して寝込んでいるとの知らせを受けたクマ君ととても仲の良いハリネズミ君が、クマ君の熱を冷ますための「雪の花」を探して無事に戻ってくるファンタジーを感じる物語です。 |
おひさまがおちないように チュ・チョンリャン(絵) クオ・ツェンユアン(作) 青山大樹・廣部尚子(翻訳) ライチブックス |
ぽかぽかとあたたかく心地良いおひさまの光。ずっとずっとおひさまに出ていてほしい!そんな願いを叶えるべく、動物たちが奮闘します!ラストシーンはクスっと笑って、本当におひさまがのぼって来たような温かい気持ちになれるはず。今、目の前で起こっていることに夢中になれる、そんな作品です。 |
やぁだ! マルリョケ・ヘンリヒス(作) 木坂涼(訳) BL出版 |
3歳になると自我が発達し、何でも「やだ!」と、ママの言うことに素直になれない姿が良く見られます。この絵本の「子うさぎ」もまさにそんな時期。でもママは、絶対に「~しなさい」とは言いません。「子うさぎ」がやってみたくなるような環境を用意したり、魅力的な言葉がけをしたりして、子うさぎを導きます。こんな親子関係で、「いやいや期」を乗り越えられたらいいですね。 |
たこやきのたこさぶろう 長谷川義史(作) 小学館 |
終始関西弁で繰り広げられるお話の中に、なぜか江戸っ子言葉を話す主人公。個性ゆたかなキャラクターもたくさん出てきます。読み手の工夫で子どもたちも大盛り上がり。読み手の技量も試される作品です。 |
くまちゃんがちいさくなっちゃった トム・エリヤン(文) ジェーン・マッセイ(絵) なかがわちひろ(訳) 光村教育図書 |
赤ちゃんの「ぼく」は大きなくまちゃんをお父さんからもらいました。クマちゃんはずっと「ぼく」と一緒で、大切な友だちですが、気が付けばクマちゃんはだんだん小さくなっていきます。そして「ぼく」も一人立ち。 子どもの成長が優しい表現(絵や言葉)で描かれていて、可愛らしく温かな感じがするのと同時に、ちょっぴり切ない気持ちにもさせられます。大人が子どもの成長を喜び、また懐かしむ気持ちが心に残る作品です。 |
おおきなうみとちいさなマーヴィー H@L(作・絵) フレーベル館 |
ひとりだちするおにいさんを見送るくじらのマーヴィー。もし自分だったらどんな海でどんなふうに暮らそうかなぁ。何になろうかなぁ。歌手になってコンサートを開いたり、旅芸人やおまわりさんもいいなぁ。毎日毎日わくわくしながら未来を思い描きます。 人生という大きな海にこぎだす小さな子どもたちが自分の可能性に気づける絵本です。 |
海とそらがであうばしょ テリー・ファン(作) エリック・ファン(作) 増子久美(訳) 化学同人 |
絵本の魅力は絵の美しさにあります。柔らかい色味ながら美しい絵と、登場する魚や鳥たちの大胆なタッチに引き込まれていきます。おじいさんとフィンの絆も見え隠れして、切なさもちりばめられた作品です。 |
秋 かこさとし(著) 講談社 |
『からすのパンやさん』でお馴染みのかこさとしさんは2018年に92歳で亡くなりました。亡くなったあとで娘さんによって発見され、2021年に出版された本書は、かこさんの遺した膨大な作品群の中でも珍しい、「戦争」についてのお話です。秋が一番好きな季節だったというかこさんにとって、その年の秋は生涯忘れられない秋になりました。戦争を心底憎んでいたかこさんの、痛切なメッセージが、いま時を超えて私たちの胸に突き刺さります。 |
わたしのかみがた 樋勝朋巳 ブロンズ新社 |
わたしがなぜこの髪型になったのかその変遷と理由を語ります。昔は短い髪の毛だったこともある。だんだん伸びて、長い髪を黄色にしたり、赤くしたりしたこともある。 髪型が変わるたびに、洋服もカラフルになり、表情もくるくる変わります。いいときも、悲しくなるときもありました。髪型のことではありますが、まるで人生のいろいろな場面のようです。 |
〈きもち〉はなにをしているの? ティナ・オジェヴィッツ(文) アレクサンドラ・ザヨンツ(イラスト) 森絵都(訳) 河出書房新社 |
「<こいしさ>は、マフラーのにおいにひたる。」「<どきょう>は森のまんなかでひとやすみ。」等、心の中に宿る感情たちが登場人物。感情を表す詩のような言葉たちが実にしっくりと腑に落ちるのです。自分が抱いている種々の感情に、正であれ負であれ、愛おしさを覚えました。 |
おはいんなさいえりまきに 角野栄子(作) 牧野鈴子(絵) 金の星社 |
私たちに≪人(ひと)≫としての優しさの大切さを訴えかけています。親である誰しもが、わが子について、優しい人間に育ってほしいと願っています。でも、どうすれば優しい人間に育つか。わかりません。もしかしたら、この絵本が、いや、絵とストーリーが子ども達の心を優しさに向けて静かに手引きしてくれるのではないでしょうか。 |