ようちえん絵本大賞
第11回ようちえん絵本大賞
-新しい絵本をみつけよう-
第11回ようちえん絵本大賞は、“子どもに読み聞かせたい絵本”、“お父さん・お母さんに読んでほしい・お勧めしたい絵本”、“まだ多くには知られていない素晴らしい絵本”を選考の基準として、(公財)全日本私立幼稚園幼児教育研究機構・調査広報委員会が過去おおむね8年以内に出版された絵本の中から選考を行いました。その結果、特別賞5作品を含む15冊が絵本大賞に選ばれました。
調査広報委員一同、これからも子どもたちと絵本との出会いの一助となるよう努めてまいります。なお、参考までに調査広報委員会が絵本の紹介文を記載させていただきました。
第11回ようちえん絵本大賞 受賞一覧
絵本名・作者名・出版社名 | 絵本の紹介 | |
---|---|---|
特別賞 | (公財)全日本私立幼稚園幼児教育研究機構理事長賞 みんなのおすし はらぺこめがね(作) ポプラ社 |
「おいしそう」、「たべたーい」、「いいなー」、「えっ、こわーい」…。ページをめくるごとに子どもたちの大歓声。ラストのページをめくると、「????」のあとに、消え入りそうな「ひぇ~」の声。さてさてどんなお話でしょう?「食べ物と人」をテーマに活動している若手ユニット"はらぺこめがね"の最新作。子どもから大人まで、だれもが楽しめる「笑顔、驚き&ちょい怖い」を引き出してくれるおすすめの作品です。 |
調査広報委員長賞 そらからきたこいし しおたにまみこ(作・絵) 偕成社 |
ある夜のこと、主人公ハナが外をながめていたら、小さな石を見つけました。手の上で浮かんでいます。不思議に思いビンに入れて大切にしていました。ハナは一生懸命いろいろと図鑑で調べてみます。でも、同じ石はありません。するとまた石が空から落ちてきました。そして前の石にぴったりくっついて大きくなり、高く浮かぶようになりました。しだいに青く光りはじめ、ハナをやさしく照らします。ベッドの下に押しこんでおきますがベッドも少し浮くくらいに大きくなりました。毎日大切に磨いているとハナの大切な石がある日、海辺の方に飛んでいってしまいます。高く そして遠くへ…ハナの純粋でやさしい心が美しい絵からも伝わってきます。 | |
調査広報委員長賞 ぼくたちは みんな 旅をする ローラ・ノウルズ(著) クリス・マッデン(絵) 石川直樹(訳) 講談社 |
「この本にでてくる話はすべてほんとうです」。という最初の一文にどきどき。今から冒険に出かけるような気分でページをめくることができます。優しい色合いで繰り広げられる動物たちの壮大な世界観。そこにいる動物たちは旅の大切さを生まれた瞬間から本能的に知っているとか。もちろん、私たち人間も。信じられないほどの長い距離を移動しながら生きる動物たちのことが分かると、空を飛んでいる鳥たちでさえ、愛しく見えます。 | |
こどもがまんなかPROJECT賞 の junaida(作) 福音館書店 |
題名は「の」、作者は「じゅないだ」。 美しい表紙の魅力に引き込まれ、「いったい何?」と、不思議な気持ちで手にした絵本の中には、「の」の織り成す奇想天外な世界が広がっていました。頁を繰るごとに現れるのは、ちっとも繋がりのない景色ですが、「の」の不思議と絵の力が物語を紡いでいきます。 「わたしの」で始まり巡り巡って最後のページの言葉は「わたし」。「の」を繋げて最初に戻ると、終わりのない不思議な物語です。 |
|
こどもがまんなかPROJECT賞 ほら、ここにいるよ オリヴァー・ジェファーズ(作) tupera tupera(訳) ほるぷ出版 |
この絵本は、作者オリヴァー・ジェファーズが、誕生した息子に、この世界のすばらしさや不思議なこと、生きていくために大切なことを伝えようと作られました。まず、宇宙から見た地球を説明し、次に地球の成り立ち、そして我々人間の体の説明へと進んでいきます。さらに、地球には多種多様な人間がともに生活していること、いろいろな動物とも一緒に暮らしていること。みんなが認め合い、希望を持って生きていこうというメッセージです。 | |
絵本名・作者名・出版社名 | 絵本の紹介 | |
とんでいった ふうせんは ジェシー・オリベロス(文) ダナ・ウルエコッテ(絵) 落合恵子(訳) 絵本塾出版 |
この作品は思い出や記憶を風船として描いています。ぼくは、おじいちゃんの思い出を聞くのが大好きです。でもおじいちゃんはだんだん同じ話を繰り返すようになり、風船が一つずつ飛んで行ってしまいます。おじいちゃんは認知症になってしまいました。はじめぼくはそのことを理解できず、受け入れることができませんでした。しかし、パパとママが優しく教えてくれたので、また、おじいちゃんとの暮らしが返ってきました。 | |
わすれもの 豊福まきこ(作) BL出版 |
ベンチの上に忘れられた羊のぬいぐるみが主人公です。羊のぬいぐるみは、もちろんベンチから動くことができないのですが、ベンチの前を行き交う人や動物たちの交流がこの物語の素敵なお話になっています。羊のぬいぐるみは自分で動けませんから、怖いものからも逃げることができませんが、必ずそこに助けてくれる誰かがいてくれるところが、このストーリーの感動的なところです。そして、最後はどんなストーリーで終わるのかは、お読みになってのお楽しみ。 | |
はじめまして 近藤薫美子 (作・絵) 偕成社 |
この絵本で1番感動的なのは、四季折々の自然界の風景を色鉛筆であざやかに丁寧に描かれており、本当にリアルな表現が美しくまたほのぼのとした温かさを感じさせてくれます。加えて文章が絵とマッチングしていて、動物や植物たちの季節ごとの触れ合いが温かく表現されています。そして、その表現が主観的な表現ではなく客観的な表現で端的に表現されているところがこの作品の読みやすさでもありわかりやすい点です。みなさんも色鉛筆で描かれた絵本の世界に飛び込んでみてはいかがですか。 | |
かいちゅうでんとう みやこしあきこ(作) 福音館書店 |
暗闇って本当は怖いのだけど、違った空間にいるみたいで、実に魅力的と思いませんか。押し入れの中や、寝る前、電気を消した瞬間の暗闇。その暗闇を懐中電灯で照らすことで、見事に表現した一冊です。懐中電灯に照らされた小さな明かりと、暗闇のコントラストが絵本の世界の素晴らしさを表現しています。主役は懐中電灯だけれど、本当は暗闇が主役?幼いころ、影絵を楽しんだことなどを思い出し、ノスタルジックな気分に浸れます。 | |
うし 内田麟太郎(詩) 高畠純(絵) アリス館 |
この絵本には牛しか登場しません。でも、子ども達には、きっと大受けすることでしょう。 「牛がうしろをふりかえったら、牛がいた。そのうしろの牛もうしろをふりかえったら牛がいた。その牛がふりかえったら牛が…」。そして最後には数えきれないほどの牛が描かれています。当園の子ども達は、大爆笑しました! |
|
まめまめくん デヴィッド・カリ(文) セバスチャン・ムーラン(絵) ふしみみさを(訳) あすなろ書房 |
皆と違い小さい主人公は、明るく何でも一生懸命に挑戦して出来るようになる頑張る子です。しかし小学校になって初めて皆と違い小さいことが不利であることに気づきます。皆と遊べないしいつも一人。でも好きなお絵描きを一生懸命やったことで、小さくとも大人になって立派な仕事につけたという物語です。皆と違うことを感じて引っ込み思案になっている子への希望の絵本。繊細な絵がとても素敵です。 | |
なまえのないねこ 竹下文子(文) 町田尚子(絵) 小峰書店 |
名前のない猫は名前のある猫たちを羨ましく思い、自分の名前をさがし回ります。でも、自分にぴったりな名前はなかなか見つかりません。そして、欲しかったのは名前ではなかったということに気付くのでした。 本の表紙の見開きにはたくさんの猫たち。主人公である名前のない猫もいます。そして、裏表紙の見開きではその猫たちの名前が紹介されているのですが、果たして、名前のない猫に名前はあるのでしょうか?。 |
|
でんせつのじゃんけんバトル ドリュー・デイウォルト(著) アダム・レックス(絵) 中川ひろたか(訳) 河出書房新社 |
誰でも知っている「ジャンケン」のお話です。勝つこともあるけれど、決して敵わないこともあるという物語。至極当然のお話ですが、そこに繰り広げられる壮絶な勝負は何とも魅力的です。戦いごっこの大好きな子どもたち、必見です! | |
蜜蜂さん ありがとう 野田章子(著) さいとうじゅん(絵) 朝日学生新聞社 |
作者野田章子さんは90歳を超えて今は老人ホームで過ごされています。日々、ホームの仲間が元気に仲良く過ごせるには何が大切か考えている中で、「話すこと、笑うこと」が一番の元気の源とお話なさっています。…それをテーマに初めての絵本製作に取り組まれたそうです。四季を通しての蜜蜂と自然の営みと人とのかかわりが、やさしく伝わってきます。「そよ風そよそよいい香り おはようさん おいしい蜜をさあどうぞ。 小さな力も集まれば大きくなるね。明るく楽しく励ましあおう。みんな同じお山の生き物さ 命をつなぐ仲間だよ。」小さい蜜蜂が野山で元気に働く姿に忘れかけていた何かに気づかされます。さいとうじゅん先生の明るい絵にもほっといたします。 |
|
ぽちっと あかい おともだち コーリン・アーヴェリス(文) フィオーナ・ウッドコック(絵) 福本友美子(訳) 少年写真新聞社 |
一面の氷、雪が降りしきる中、ママの魚捕りに飽きてきたホッキョクグマの<ミキ>くん。「何か面白いことはないかな」としばらく歩いていくと、遥か向こうにポツンと赤いものを見つけます。「なんだろう?」と、ミキは一目散に走って近づきます。その「ぽちっとあかいもの」は人間の女の子だったのです。お互い初めて見る「生き物」どうし、天真爛漫に楽しいひとときを過ごします。そこから生まれる友情と、最後にホッとあたたかい親子の愛情に、心和む絵本です。 |